@ 抵当権
1. 抵当権とは
債権が回収出来ない事態を防ぐために、代わりのものを確保しておく為の権利をいう。
抵当権において、自己の不動産に抵当権を設定した者のことを、抵当権設定者、抵当権によって回収を確保される(担保される)債権
のことを被担保債権という。
なお、債務者以外の者が所有する不動産に、抵当権を設定することもでき、他人の借金のために、抵当権の目的物を提供する人の
ことを物上保証人という。
2. 抵当権の特徴
抵当権を設定しても、目的物の占有は移転しません。
また、目的物が売却されて第三者の物になっても、抵当権はそのまま行使できるので、特に抵当権者が不利益を受けません。
同じく借金の担保のための権利として「質権」というものがありますが、質権の場合、質物を質権者に渡す必要があります。
この場合土地の所有者が、その土地の上に建物を建てようとしても、敷地を質権者に渡しているので、建築できない(抵当権の場合
は建てることができる)。
3. 抵当権の目的物
抵当権の目的物にできるのは、土地、建物、地上権、永小作権だけです。
土地と建物は別個独立の不動産なので、抵当権も土地・建物それぞれに対して、別個独立に設定されます。
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A 抵当権の性質
1. 物上代位性とは
目的物の代わりの物に抵当権を行使することを物上代位という
抵当権者は、
@ 目的物が滅失、損傷した場合に抵当権設定者が受け取る保険金や賠償金、
A 目的物を売却した場合の売買代金、
B 目的物を賃貸した場合の賃料など
に対しても、抵当権を行使することができる。ただし、抵当権者は、これらの金銭が抵当権設定者に払い渡される前に、自ら差押え
をしなければならない。
2. 不可分性とは
債権が一部消滅した場合でも、抵当権の効力はそのまま目的物の全体に及ぶことをいう。
3. 付従性とは
抵当権がその被坦保債権の運命に付き従う性質をいい、被担保債権が錯誤や公序良俗違反などで無効の場合、それを担保すべき
抵当権も無効となる。
あるいは、被担保債権が時効消滅したり、全額弁済によって消滅すれば、抵当権も自動的に消滅します。
4. 随伴性とは
抵当権者が、被担保債権を譲渡した場合、抵当権もその被担保債権にくっついて移転することをいう。
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B 抵当権の効力
1. 抵当権の効力が及ぶ範囲
抵当権は、
@不動産の構成部分となって独立性を失ったもの(雨戸、立木、庭石など)
A抵当権設定当時の従物(畳、建具など)、
B借地上の建物に抵当権を設定した場合の借地権など
に効力が及び土地に抵当権を設定した場合におけるその土地上の建物、建物に抵当権を設定した場合におけるその敷地、目的物
の天然果実などには、抵当権の効力は及びません。
抵当権は、目的物の占有を抵当権者に移すことなく、抵当権設定者(目的物の所有者)がそのまま目的物から収益をあげることので
きる権利です
ただし、被担保債権について不履行があった場合、その後生じた果実に抵当権の効力が及びます。
2. 妨害排除請求権
妨害排除請求権とは、目的物の価値を減少させるような行為があった場合、抵当権者は、その行為をやめるよう請求することができ
、この妨害排除請求権は、被担保債権の弁済期が来る前でも行使できる。
3. 他の債権者との関係
同一の目的物に重ねて抵当権を設定することが出来、その場合は、それぞれの抵当権に順位がつき、競売等で得た代金の配当も
分配ではなく、順位に従い支払われる。
抵当権の順位は、契約の順序ではなく、登記の順位で決まり、各抵当権者が合意して、抵当権の順位を後で変更することもできる。
ただし、当事者の合意他、登記を行なう必要がある。
なお、抵当権の順位の変更に、債務者や抵当権設定者の承諾は必要ない。
4. 利息の範囲
抵当権者は、元本について全額競売代金から優先的に弁済を受けられるが、利息については、満期となった最後の2年分(抵当権
の実行によって配当が行われる時からさかのぼって2力年分)に限って優先弁済を受けることができ、他に債権者や後順位の抵当権
者がいないときは、利息全額を受けることができる。
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C 抵当権と利用権の調整
1. 法定地上権
次の事由に限り、土地と建物の所有者が別となった場合、建物所有者に不利益が生じる恐れがあるため、法律上自動的に地上権を
与えること
法定地上権の成立要件
@ 抵当権設金当時、土地の上に建物が存在すること(更地ではない)
A 抵当権設定当時、土地と建物の所有者が同一であること
B 競売の結果、土地と建物の所有者が異なるに至ったこと
2. 一括競売
更地に抵当権を設定した後、抵当地上に建物が築造された場合、抵当権者は、土地とともに建物を競売にかけることができる。
ただし、優先弁済を受けることができるのは、土地の代価についてのみである。
3. 邸陋見と賃借権の関係
不動産に抵当権と賃借権がついていた場合、原則的には、先に登記をしたほうが優先します。
先に賃借権の登記がされていた場合は、抵当権が実行されても、目的物には賃借権の負担がついたものとして扱われ、先に抵当権
の登記がされていた場合は、抵当権が実行されると、賃借権は否定される。
但し、賃借権の登記前に登記した抵当権者のすべてが同意し、かつ、その同意の登記をしたときは、抵当権設定登記後の賃借権で
あっても、抵当権者に対抗でき、対抗できない場合でも、競売手続開始前から抵当権の目的である建物を使用・収益していた場合、
競売で買受人が買い受けた時より6カ月間は買受人に引渡さなくてもよいとされている。
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D 第三取得者との関係
1. 第三取得者とは
抵当権のついている不動産を買い受けた者をいう。
この場合、抵当権の登記が行われている限り、抵当権はそのまま存続します。
2. 代価弁済とは
本来行なうべき目的物の売主への代金の支払を、抵当権者が第三取得者に請求し、第三取得者がこれに応じた場合、抵当権が消
滅することをいい、代金額が被担保債権額に満たない場合でも、抵当権は消滅します。
残金に関しては抵当権による担保がない、通常の債権として請求していくことになる。
3. 抵当権消滅請求とは
第三取得者のほうから働きかけて、抵当権を消滅させる制度いい、第三取得者から抵当権者に対して、一定の金額を提示し、抵当
権を消減させることを請求します。
抵当権者がこれを承諾して,第三取得者が支払えば、抵当権は消滅します。
このとき、第三取得者は抵当権消滅請求の手続きが終わるまで、目的物の売主に対する代金支払いを拒むことができる。
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E 根抵当権
1. 根抵当権とは
継続的な取引関係があり、債権の発生・消滅を繰り返す当事者間で、に一定の範囲に属する不特定の債権を、一括して担保するこ
とをいう。
2. 根抵当権の範囲
(1) 極度額
根抵当権の登記には、極度額(金額が変動するゆえに設ける担保の限度額)が登記される。
根抵当権が一番抵当の場合、極度額の範囲内に限り、利息の優先期限(抵当権でいう最後の2年)の期限はない。
(2) 確定期日
変動する債権を確定するために、期日を決めて、その期日に存在する債権のみを被担保債権として固定する必要があり、その期
日を確定期日という。
確定期日の要点
@ 確定期日をあらかじめ定めておく必要はない
A 確定期日を定める場合は、契約の日から5年以内の期日としなければならない。
B 根抵当権設定時から3年を経過すると、根抵当権設定者は元本の確定を請求することができる。
C 根抵当権者は、いつでも元本の確定を請求することができる。
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